
東京都現代美術館で開催されている「新説/真説 コシノヒロコ『(UN)KNOWN』」へ行ってきました。
コシノヒロコといえば、ファッションデザイナーというイメージを持っていました。
しかし、会場に並んでいたのは洋服だけではありません。
絵画やファッション写真、テキスタイル、映像、インスタレーションなど、多彩な作品を通して、
コシノヒロコさんの創作の原点から現在までの歩みをたどる展覧会でした。
展示室に入って最初に目を引いたのは、中央に置かれた一着の白いドレスです。

大きく広がる白い帽子、立体感のあるシルエット、モノトーンで描かれた蓮の花、そして裾に添えられた鮮やかな赤。洋服というより、一つの彫刻作品を見ているような存在感があり、
これから始まる展示への期待が一気に高まりました。
会場は5つのチャプターで構成されており、それぞれ異なる視点からコシノヒロコさんの創作の世界を体感できます。
チャプター1 原体験と想像力——コシノヒロコの世界
展示室に入って最初に感じたのは、「ファッション展」というより、
一つの大きなアート作品の中へ入り込んだような感覚でした。
色彩豊かな壁画やインスタレーションの中に数多くの衣装が展示され、
それぞれが独立した作品でありながら、一つの世界観として見事に調和しています。
どこを見ても絵になる空間で、思わず足を止めて見入ってしまいました。
特に印象に残ったのは、ニット作品の美しさです。
私は普段、洋服を見るときはデザインやシルエットに目が行くことが多いのですが、
この展示では編み方や立体感、素材そのものの表現力に惹きつけられました。
一枚一枚のニットを近くで見ると、その緻密な技術に驚かされます。
「ニットでここまで表現できるのか。」
そう思わずにはいられない作品ばかりで、ファッションという枠を超えた造形作品のようにも感じました。
どの作品も個性的なのに不思議と統一感があり、写真を撮る手が止まらないほど魅力的な空間でした。





チャプター2 交錯する美学 —— コシノヒロコと日本的モダニティ
チャプター2では、日本の伝統的な美意識と現代ファッションが融合した作品が展示されています。
着物を思わせるシルエットや鮮やかな色彩、日本画のようなモチーフなど、
日本らしさを感じる作品が数多く並び、和とモダンが美しく調和した空間が広がっていました。

中でも一番印象に残ったのが、チェリー柄の椅子を使ったインスタレーションです。
透明なチェリー柄の椅子はもちろん、その床に映し出されたチェリーの影までが作品の一部となっていて、
展示室に入った瞬間から思わず目を奪われました。
光を透過した模様や影によって空間全体が一つの作品として完成されており、
ただ椅子を展示しているだけではない演出に驚かされます。
洋服だけを展示するのではなく、光や空間そのものを作品として見せる演出も、
この展覧会ならではの魅力だと感じます。

チャプター3 コラボレーション——群像
コラボレーター:マティルド・ドゥニーズ、ペロタン
このチャプターでは、フランスのアーティストであるマティルド・ドゥニーズとの
コラボレーション作品が展示されています。
私はコシノヒロコさんが海外アーティストとコラボレーションをしていたことを、この展覧会で初めて知りました。
会場に入ると、それまでとは雰囲気が一変します。
色鮮やかな絵画や洋服が空間いっぱいに広がり、まるで現代アートの展示室に足を踏み入れたような感覚でした。
特に印象に残ったのは、絵画と洋服が一体となったインスタレーションです。
本来、洋服は「着るもの」ですが、ここでは空間に浮かぶオブジェのように展示され、
まるで一つのアート作品として存在していました。
洋服と絵画の境界がなくなり、それぞれが自然に溶け込んでいる様子は、
このコラボレーションならではの魅力だと感じます。
近くで見ると、布の質感や色使い、プリントの細かな表現まで見応えがあり、
思わず作品の周りを何度も歩いてしまいました。
ファッションブランドの展示というより、美術館ならではの現代アート展を見ているような、
不思議で心地よい空間でした。


チャプター4 テキスタイルへの情熱 —— 創作の核心
私が今回の展覧会で、一番驚いたチャプターがここでした。
理由は、とてもシンプルです。
展示されている洋服に、実際に触れることができたからです。
これまでファッションブランドの展示会や展覧会にも何度か足を運んできましたが、
作品に自由に触れられる展示は初めてでした。
そんな展示は今まで経験したことがなかったので、とても新鮮でした。
せっかくの機会だったので、全部触ってきました。
ふんわりとしたニット、立体感のあるキルティング、繊細で軽やかなシアー素材、細かなプリーツ、
毛足の長い生地……。
見た目だけでは分からなかった柔らかさや厚み、素材ごとの違いを実際に感じることができ、
作品への印象が大きく変わりました。
特に印象的だったのは、同じ洋服でも素材によってまったく違う表情を見せることです。
写真では伝わらない質感や重さ、空気を含むような軽さまで体感できたことで、
「服は見るもの」だけではなく、着心地や素材まで含めてデザインされていることを改めて実感しました。
コシノヒロコさんがテキスタイルをこれほど大切にしている理由を、実際に触れることで理解できた気がします。
作品を「見る」だけではなく、「触れて感じる」ことができたのは、この展覧会ならではの貴重な体験でした。
チャプター5 絵描き少女と子どもたち——未来への恩返し
最後のチャプターは、それまでの展示とは少し雰囲気が変わり、子どもたちとの取り組みを紹介する展示でした。
展示されていたのは、小学生が自由に描いた絵やアイデアをもとに制作された洋服や作品です。
子どもたちならではの自由な発想は、大人では思いつかない色使いや形ばかり。
その一枚一枚の絵から想像を膨らませ、本物の洋服として形にしていることに驚かされました。
作品の横には、もとになった子どもたちの絵も一緒に展示されています。
絵を見比べながら洋服を見ると、「こんな絵が、本当に服になるんだ。」と、ものづくりの面白さを改めて感じました。
そして、展示を見ながらふと、
「私も小学生の頃に、こんな体験をしてみたかったな。」
と思いました。
自分の描いた一枚の絵がプロの手によって作品となり、美術館に展示される。
子どもたちにとって、それは一生忘れられない経験になったのではないでしょうか。
展覧会の最後が、未来を担う子どもたちとの創作活動で締めくくられていたことも、とても印象的でした。
コシノヒロコさんが、これまで培ってきた経験や創造力を次の世代へつないでいこうとする想いが伝わり、
温かい気持ちで会場を後にしました。


まとめ
コシノヒロコさんと聞くと、ファッションデザイナーという印象を持つ方が多いかもしれません。
しかし、この展覧会で出会えたのは洋服だけではありませんでした。
絵画、テキスタイル、インスタレーション、海外アーティストとのコラボレーション、
そして子どもたちとの創作活動。
さまざまな表現を通して、コシノヒロコさんの創作の世界を体感できる展覧会でした。
中でも特に印象に残ったのは、作品に実際に触れられるテキスタイル展示です。
素材や質感を自分の手で確かめることで、
「服は見るもの」だけではなく、「触れて感じるものでもある」という新しい発見がありました。
また、最後のチャプターでは、子どもたちの自由な発想を作品へと形にする取り組みに触れ、
ものづくりの楽しさや、次の世代へ創造力をつないでいくことの大切さも感じました。
ファッションが好きな方はもちろん、アートが好きな方にもおすすめしたい展覧会です。
洋服を「着るもの」としてだけではなく、「表現するもの」として見るきっかけを与えてくれる、
とても印象深い時間になりました。

