立川のPLAY! MUSEUMで開催されている「安西水丸展 ぼくのあそび」に行ってきました。
安西水丸さんといえば、イラストレーターとしてだけでなく、絵本作家やエッセイストとしても活躍した人物です。
村上春樹さんの装丁や挿絵を思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。
今回の展示では、代表的なイラストや絵本の原画だけでなく、
実際に使用していた画材や仕事道具、本棚やアトリエの様子まで紹介されていました。
作品そのものを鑑賞する展示というよりも、
「どんな人だったのだろう」「どんな暮らしの中で作品が生まれたのだろう」と想像しながら歩ける展示です。
会場に入ると、まず目に飛び込んでくるのは大きなメインビジュアル。
安西水丸さんらしいシンプルで親しみやすいモチーフが並び、展示への期待が高まります。
今回の展示タイトルは「ぼくのあそび」。
その言葉どおり、会場全体に肩の力が抜けたような空気が流れていて、
作品を見るというよりも、安西水丸さんの世界を散歩しているような感覚になりました。


まずは無料ロッカーへ
入場してすぐの場所には無料ロッカーが用意されていました。
リュックなどの荷物を預けてから展示を見ることができるので、身軽な状態でゆっくり鑑賞できます。
館内は写真を撮りながら見て回ることも多いため、荷物が少ないだけでもかなり快適でした。
スマホやカメラを取り出しながら歩いても邪魔にならず、最初から最後まで気持ちよく見て回ることができました。

村上春樹さんとの交流
展示では、村上春樹さんとの交流についても紹介されていました。
展示を見るまでは、「イラストレーターとして活躍していた人」というイメージしかありませんでしたが、
実際には多くの作家や編集者と長く交流しながら創作活動を続けていたことがわかります。
本の装丁や挿絵を手がけるだけではなく、お互いの創作を支え合うような関係だったことが伝わってきました。
作品だけではなく、人とのつながりも大切にしていたことが感じられる展示でした。

「もうここにはいないとわかっていても」
展示の中には、村上春樹さんによる追悼の言葉も紹介されていました。
私は村上春樹さんの作品を読んだことがないのですが、それでもこの文章には足を止めてしまいました。
長年一緒に仕事をしてきた相手だからこそ書ける言葉が並び、
安西水丸さんという人が周囲からどれだけ愛されていたのかが伝わってきます。
展示では作品や原画だけでなく、人柄や交友関係についても紹介されていました。
そのため、帰る頃には「イラストレーター安西水丸」だけではなく、
「安西水丸という一人の人」を少し知れたような気持ちになりました。

和田誠さんとの「二人展」
展示のなかでも印象に残ったのが、和田誠さんとの「二人展」のコーナーでした。
最初は作品そのものを見ていたのですが、説明を読んで驚きました。
この作品は、安西水丸さんと和田誠さんが一枚の紙を交互に描き進めながら完成させたものだったのです。
タイトルの文字も一文字ずつ分担し、イラストも途中で紙を交換しながら制作していたそうです。
説明によると、先に描いた人の絵を活かしながら続きを描くため、途中で失敗しても描き直しはできません。
お互いの発想を受け取りながら一つの作品を作り上げていく方法は、
とても自由で遊び心があり、「ぼくのあそび」という展示タイトルにも通じるものを感じました。
完成した作品だけでなく、「どうやって作ったのか」という制作過程まで含めて楽しめる展示でした。


本・雑誌・装丁(本棚)
展示では、雑誌や広告、ポスター、本の装丁など、安西水丸さんが手がけた仕事も数多く紹介されていました。
私は安西水丸さんというとイラストレーターのイメージが強かったのですが、
実際には本当に幅広い分野で活躍していたことに驚きました。
展示されている作品を見ていると、「どこかで見たことがある」と感じるものも少なくありません。
それだけ安西水丸さんの絵が、雑誌や広告、本を通して私たちの日常の中に自然と溶け込んでいたのだと思います。
シンプルな線と大胆な色使いなのに、一度見たら忘れない。
かわいらしさもあるのに子どもっぽくなりすぎず、見る人の記憶に残る不思議な魅力があります。
展示を見ながら、「この仕事も」「これもそうだったのか」と思う場面が何度もありました。
長いあいだ第一線で活躍し続けた理由が、少し分かったような気がします。




絵本
安西水丸さんは、イラストレーターとしてだけでなく、多くの絵本も手がけています。
会場には絵本の原画や実際に出版された作品が数多く展示されていました。
鮮やかな黄色の菜の花畑、深い青色の海、表情豊かな動物たち。
どの作品もシンプルな線で描かれているのに、ページを眺めているだけで物語の世界が伝わってきます。
原画を見ると、印刷された絵本とはまた違った魅力がありました。
絵の具の重なりや紙の質感まで感じられ、絵本ができあがるまでの過程を少し覗き見しているような気分になります。
私自身、展示されていた絵本を読んだことがあるわけではありませんでしたが、
それでも思わず足を止めて見入ってしまいました。
子ども向けの作品でありながら、大人が見ても楽しめる。
そんなやさしさと遊び心が感じられる展示でした。



実際に使っていた画材や道具
展示のなかでも特に興味深かったのが、安西水丸さんが実際に使用していた画材や仕事道具のコーナーです。
仕事道具というよりも、その人らしさが感じられる私物のようで、
作品だけでは分からない人柄が少し見えた気がします。
また、長年愛用していた眼鏡や万年筆なども展示されていました。

アトリエと暮らし
展示ではアトリエの様子も紹介されていました。
本棚には仕事に関する本だけでなく、置物やスノードーム、民芸品などが数多く並んでいます。
机の上もきれいに整理されているというよりは、好きなものに囲まれた居心地のよい空間という印象でした。
イラストを描くための場所というより、「好きなものを集めた部屋」そのもの。
だからこそ、あの温かくて遊び心のある作品が生まれたのかもしれません。


本棚に並ぶ作品たち
壁一面には、これまで手がけてきた絵本やエッセイ、装丁本などが並んでいました。
改めて見ると、その仕事量の多さに驚かされます。
子ども向けの絵本からエッセイ、雑誌の仕事まで幅広く活動していたことが分かり、
イラストレーターという枠だけでは語れない存在だったことを実感しました。

仕事道具や制作過程も見どころ
また、イラストの描き方や制作工程を紹介するコーナーもあります。
安西水丸さんの作品はシンプルな線と色使いが特徴ですが、その裏側には細かな工程がありました。
色ごとに分けたシートを重ねて一枚の絵を完成させる手法は、今見るとアナログならではの面白さがあります。


完成した作品だけを見ていると気づきませんが、
色の選び方や構図、線の太さまで細かく考えられていることが伝わってきました。
シンプルだからこそ難しい。
展示を見ながら、長く第一線で活躍してきた理由が少し分かった気がします。
体験コーナーも充実
この展示は作品を見るだけでなく、実際に参加できる体験コーナーが用意されているのも魅力です。
会場内では、有料の缶バッジ制作ワークショップが開催されていました。
安西水丸さんのイラストを使ったデザインのほか、自分で描いた絵を缶バッジにすることもできるそうです。

さらに、自由に絵を描けるスペースもありました。
用意された台紙に絵を描き、完成した作品は壁に展示されます。
私が訪れたときも、子どもから大人までさまざまな作品が飾られていて、
来場者自身が展示の一部になっているようでした。
完成された作品を鑑賞するだけでなく、自分でも手を動かして楽しめるのはPLAY! MUSEUMらしいところです。


美術館というと静かに作品を見る場所という印象がありますが、
この展示は「見る」「知る」だけでなく、「遊ぶ」ことも大切にしているのが印象的でした。
展示タイトルの『ぼくのあそび』という言葉が、最後までしっくりくる空間だったと思います。
迷路のような展示空間
今回の展示で印象的だったのは、展示空間そのもののつくりです。
一般的な美術展のように順路をまっすぐ進むのではなく、
曲線の壁で区切られた空間を歩きながら作品を見ていきます。

先が見えないため、「次はどんな作品があるのだろう」と自然に足が進みます。
作品を順番に追うというよりも、散歩をしながら発見を楽しむような感覚でした。

「ぼくの水平線」
会場の途中には「ぼくの水平線」というテーマも登場します。
安西水丸さんの作品にたびたび描かれる水平線や海のモチーフを意識した構成になっていて、
展示全体にもゆったりとした空気が流れていました。

広々とした空間の中に作品が配置されているため、一つひとつの作品を落ち着いて鑑賞できます。
壁面のイラストや展示台の色使いも作品世界と統一されていて、展示そのものが一つの絵本のようでした。

展示を見終わるころには、作品だけでなく空間そのものも印象に残っていました。

展示のあとに
展示を見終えたあとは、併設されているカフェでひと休みしました。
注文したのは「大人さまランチ」。
ハンバーグやエビフライ、オムレツなど、どこか懐かしさを感じるメニューです。
さらに、安西水丸さんのイラストをモチーフにしたピックが添えられていて、最後まで展示の世界観を楽しめました。

展示を見て終わりではなく、カフェで余韻に浸りながら過ごせるのもPLAY! MUSEUMの魅力です。
作品や展示空間を思い返しながらゆっくり食事をしていると、
まるで展示の続きの時間を過ごしているような気分になりました。
まとめ
正直なところ、訪れる前は安西水丸さんについて詳しく知りませんでした。
それでも、本や雑誌、ポスター、絵本など幅広い仕事に触れ、
村上春樹さんや和田誠さんとの関わりを知ることで、その魅力を十分に感じることができました。
展示では完成した作品だけでなく、実際に使っていた画材や仕事道具、制作過程まで紹介されています。
シンプルで親しみやすい絵の裏側に、多くの工夫や試行錯誤があったことを知れたのも印象的でした。
また、迷路のような展示空間や体験コーナーなど、
作品を見るだけではない楽しみ方ができるのもこの展示の魅力です。
会場全体にはどこか肩の力が抜けた空気が流れていて、
作品を眺めながらゆっくりとした時間を過ごすことができました。
イラストやデザインが好きな人はもちろん、休日に少し気分転換をしたい人にもおすすめしたい展示です。


